湯どうふの順正
辞 装 桜 旬の味わい 京のこばなし 平成とうふ百珍 拝観・見学一覧 絵ハガキ マップ バックナンバー ホーム
Kuroda Shozokuten 装
歴史を忠実に守り、再現する匠の技と心が生む優美な装束

記事をPDFで閲覧する

十二単や神祇装束などに使われる有職織物。平安時代から伝わるその紋様や色合いは、なんとも華やかで雅な風情です。

十二単や神祇装束などに使われる有職織物。平安時代から伝わるその紋様や色合いは、なんとも華やかで雅な風情です。

 都大路に爽やかな初夏の訪れを告げる「葵祭」では、平安装束を身にまとった行列が都大路を練り歩き、王朝の雅を私たちに伝えてくれます。
こうした祭礼を支える裏方≠ニして、供奉(ぐぶ)する人々や神官の装束を一手に担う「装束司」の存在があることをご存知でしょうか。

 京都御苑の南側、堺町御門前にある「黒田装束店」は、江戸時代初期より祭事や神事で使用する装束を調進してきた老舗。葵祭や時代祭、吉田神社の追儺式(ついなしき)の装束のほか、神社の御内陣に納める神具類などを手掛けています。「うちでは、装束の製作から着付け、修理・修復、小物を手がける職方への発注までを一貫して執り行っています。装束司とは、祭事や神事の衣装全般をプロデュースする職種と考えていただくと分かりやすいですね」と語るのは、19代目当主で装束司の黒田幸也さん。

 取材時は、吉田神社追儺式で着用される装束の仕上げ作業中。特別にあつらえた針を使い、ひと針ずつ丁寧に縫い上げる様子は、まるで神事のように厳かで凛々しくもあります。「作り手としての技術はもちろんですが、装束司にはさまざまな歴史的・民俗学的知識も必要なんです」と黒田さん。装束や調度品、祭具などは大学や研究機関の学者による時代考証のもと、厳正な確認がなされているのだとか。「織物の種類、色、紋様などの選択は有職故実(ゆうそくこじつ)に則(のっと)って決め、製作を進めます。祭りの行列に参加される方や、お社(やしろ)の神官さんの装束についてのご相談にも応じさせていただいています」とも。装束の歴史を大切に思い、本物にこだわる黒田さんの心意気がひしひしと感じられます。

 その一方で、さまざまな新しい取り組みも積極的に挑戦。幸也さんは、講演会で伝統を後世に伝える活動を行っています。女将の知子さんは、紋様が持つ意味などを披露するワークショップの開催のほか、有職織物を用いた小物ブランドの立ち上げと運営を。息子の基起さんは、若手作家らによる伝統工芸のイベントに関わるなど、ご家族それぞれの形で伝統の豊かさと深さを発信しておられます。

 受け継がれてきた装束文化を忠実に守り、生きた伝統として次代へ繋いでいく。匠たちの思いが織り成す美しい装束は、今年も京の四季を艶やかに彩ります。

追儺式で守護の方がまとう袴を製作中。神官のお付きにあたる位のため、重厚な織物ではなく麻布を使用しているのだとか。

追儺式で守護の方がまとう袴を製作中。神官のお付きにあたる位のため、重厚な織物ではなく麻布を使用しているのだとか。

装束づくりを支える道具たち。京都の老舗に特注した針や、装束ごとに使い分けるあつらえの絹糸など。「道具を作ってくださる職人さんあってこその仕事です」と敬意も忘れません。

装束づくりを支える道具たち。京都の老舗に特注した針や、装束ごとに使い分けるあつらえの絹糸など。「道具を作ってくださる職人さんあってこその仕事です」と敬意も忘れません。

 

黒田装束店 黒田 幸也さん(中央)知子さん(左)基起さん(右)

黒田装束店 黒田 幸也さん(中央)知子さん(左)基起さん(右)

「千年以上受け継がれてきた仕事に、携われることは、幸せなことだと思います。伝統を“変えずに守る”ためには創意工夫が必要。これからも一家で力を合わせて、千年先までこの技を伝えていきたいと思います」

人の手で火加減を調整しながら、下からガス火、上から電熱で挟んで豆を煎ります

女将の知子さんがプロデュースする有職織物の小物たち。平安の雅を暮らしに取り入れられるアイテムとして人気を集めています。


Information
黒田装束店
京都市中京区丸太町通堺町東入鍵屋町63番地
TEL:075(211)8008

ページの先頭へ

ページの先頭へ