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Injoji Temple 風
読書、勉学、思索にも集中力を高める魔法の空間

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平日は正午から、土日祝日は午前9時から、いずれも深夜零時まで開館。会社帰り、家に帰る前のひとときの静けさ≠求めて来館される方も多いそうです。

平日は正午から、土日祝日は午前9時から、いずれも深夜零時まで開館。会社帰り、家に帰る前のひとときの静けさ≠求めて来館される方も多いそうです。

 哲学者・西田幾多郎や田辺元らが、思索に耽りながら散策したという「哲学の道」。その道の程近くに、静かに読書や勉学に集中できる場所として知る人ぞ知る「私設圖書館(しせつとしょかん)」はあります。

 1973年5月、読書が好きな人が気楽に立ち寄れる場を目指してつくられた同館。初めの1週間ほどは、お客さんが一人も来ない状態が続いたそうですが、やがて口伝てに評判になり、今では連日多くの人が訪れます。「15年ほど前までは、受験勉強をする人で埋め尽くされていました。そんな状況を、はじめは嬉しく思えなかったのですが、いつからか、受験勉強も大切な成長の過程だと思えるようになりました。また、10年ほど前からは利用者の層も広くなり、少しずつ思い描いていた姿に近づいてきています」と話すのは、同館の創設者でもある館主の田中厚生さん。

 来館したら、まず席を選んで「来館カード」を受け取ります。あとは、帰る際にカードを渡して時間分の料金を精算するだけ。各席の間には仕切りがあり、隣の人が気にならないよう工夫されています。唯一のルールは“私語をしないこと”。周りを気にせず勉強や読書に取り組める環境と、隣の人の気配を感じる程よい距離感。そのバランスが、不思議と集中できる空間を生み出しています。そんな雰囲気は、田中さんが特に意図したものではなく、お客さん一人ひとりによって、自然とつくり上げられていったものだといいます。大学生が真剣に勉強している中で、勉強に集中する感覚を身につけて欲しい小・中学生の親御さん。学校では勉強していない“フリ”をしている高校生。他にも、困難に直面している人や生き方に迷っている人など、ここを訪れる人は絶えません。その訳は、お客さんが無言の中に醸し出す空気感に刺激され、励まされながら、自分と、自分のしたいことに向き合えるという点にあるのかもしれません。

 「人の役に立つために勉強している姿を見ると、いつも感動するんです。それは、一生懸命勉強している姿に“美しさ”のようなものを感じるからではないかと思っています。しかし、勉学や読書に集中できる“雰囲気”という、抽象的な価値を理解してもらうことは難しい。私自身がそういった価値を発見できたのも、この図書館を続けてきたおかげだと思います」。自分の発見をみんなにも伝えたい。そのためにこの図書館を継承していきたいと田中さんは語ります。

 46年もの長きにわたって育まれた特別な居心地は、訪れた人を実家に帰ってきたような安心感で包み込んでくれます。勉強に集中したい人も、自分を見つめ直したい人も、一度、この“無言の憩いの場”を訪れてみてはいかがでしょう。

白と焦げ茶を基調とした自然の温もりあふれる内装は、田中さんの好みによるもの。壁のペンキ塗りや椅子の修理はすべて、田中さんと妻の園子さんの手で行っているのだそう。

白と焦げ茶を基調とした自然の温もりあふれる内装は、田中さんの好みによるもの。壁のペンキ塗りや椅子の修理はすべて、田中さんと妻の園子さんの手で行っているのだそう。

来館者のためのフリーノート。積み重ねられたさまざまな思いが綴られています。

来館者のためのフリーノート。積み重ねられたさまざまな思いが綴られています。

 
おもてなしのお茶はおかわり自由。コーヒー・紅茶も用意されています。

おもてなしのお茶はおかわり自由。コーヒー・紅茶も用意されています。

 
 

「私設圖書館」館主 田中厚生さん

「私設圖書館」館主 田中厚生さん

「自分にしかできないことで人に喜んでもらえることはないか、と探し続けてきた結果として、この図書館がある。『私設圖書館』という名前は自然に思いついたもので、『私』には、自分を見失わないように、という思いも込めています」


Information
私設圖書館
左京区浄土寺西田町74
TEL:075(771)4957


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