ふるふると柔らかな寒天を、自家製の蜜や餡が彩る『琥珀流し』。夏場なら6月は梅酒、7月はペパーミント、8月は冷やしあめの味わいが楽しめます。
碁盤の目をなす町並みに溶け込む、べんがら格子の京町家。軒先には季節や天候で掛け替えられる暖簾が揺れ、行き交う人の目を楽しませてくれます。
ここは、明治18年創業の和菓子の老舗・大極殿(だいごくでん)本舗の六角店。その一角に設けられた茶房『栖園(せいえん)』では、知る人ぞ知る名物・琥珀流しをはじめとする和スイーツをいただくことができます。
「この建物は、うちが代々住まいとして暮らしてきた家なんです。昔は通りに面した部屋を仕事場にしていたんですけど、向かいに工場を作って以来、材料置き場になってしもてて…。もったいないから茶房でもしたいなと思って、主人を説得したんです」。そう語ってくださるのは、4代目当主の奥様で、六角店の店主を務める芝田泰代さん。「先代も主人も、この家をとても大切にしていて、いつまでも残したいという思いが強くてね。できるかぎり建物に手を加えないという約束で、最小限の改装を施し、平成14年にオープンしたんです」。
茶房を開くにあたって泰代さんが考案した看板メニューが、琥珀流しでした。
「見た目にきれいで、おいしくて、他のどこにもなくて、それでいて楽しいものがしたかったんです。オープンがちょうど春だったので、やわらかい寒天に粒あんを添えて、桜の蜜をかけてね。するとすごく評判が良かったんです。そうこうするうちに5月になって、新茶の時季やし抹茶の蜜に変えて…そんな風に気分で味を変えていたら、いつのまにか月替わりのメニューが揃っていました。最初、冬は(琥珀流しを)お休みしようとしてたんですけど、冬もやってほしいとのご要望が多くて。ありがたいことですね」。
夏季の琥珀流しは、6月が梅酒、7月がペパーミント、8月が冷やしあめ。淡白な寒天を飽きずに楽しんでもらうために、必ず食感の異なるものを取り合わせているのだとか。「たとえばペパーミントなら、あっさりしているので、シュワシュワしたサイダーを添えます。炭酸の刺激が、夏の暑さにちょうどいいんですよ」。
琥珀流しの爽やかな口当たりと、泰代さんのやわらかな京言葉が、炎暑の夏にひとときの涼を届けてくれます。
季節や天候に合わせて掛け替えられる、遊び心たっぷりの暖簾。
Information
大極殿本舗 六角店
京都市中京区六角通高倉東入
TEL:075(221)3311
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「茶房をやってわかったのは、お客様の反応を直接知ることができる喜び。おいしかった≠ニ言われるとうれしいし、それを工場に伝えると職人さんたちの励みにもなります。喜んでいただける限り、続けていきたいと思います」
店頭では創業時から味とパッケージを守り続けるカステイラをはじめ、こだわりの和菓子を販売。
お得意先回りに使う漆のお菓子箱など、代々受け継いだ道具類は今も現役なのだそうです。
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