喜久春の原点とも言える『竹の子最中』。第22回全国菓子大博覧会 総裁賞を受賞。丹波大納言、白小豆、京柚子の3種の餡が愉しめます。
今回は東山から少し足を伸ばして、西山、乙訓地域へ。この地は春の味覚の王様、竹の子の産地としてあまりにも有名ですが、乙訓の代名詞ともいえる竹の子を使ったご当地スイーツ≠ェあるのをご存知ですか?
長岡京市の菓子処 喜久春(きくはる)に並ぶのは、コロンとした立ち姿が何とも可愛らしい『竹の子最中』。創業者 西山喜久治(にしやまきくじ)さんが「長岡京と言えばコレ≠ニいう定番のお土産として、親しんでもらえれば」と考案したのがこの最中でした。
製法は、まず厳選した竹の子を三日三晩かけて程よい甘さの甘露煮にします。最高級の丹波大納言を使った自家製の餡は、すっきりとした甘みを出すため氷砂糖で炊き上げるのが喜久春流。新大正もち米で作った竹の子型の皮でそれらを優しく包み込み、軽いサクサク感や香りを逃さぬよう、製造から袋詰めまでを3人1組で素早く行います。
中に入れる竹の子は、固さのある根元部分。京都の竹の子は柔らかくえぐみが少ないことで知られていますが、「やらかい穂先では、あの食感が出ぇへんのでね」というわけです。竹の子の柔らかい部位は、餅や饅頭など竹の子を使った別のお菓子に使うとのこと。
さて、気になるそのお味。穂先≠フ方から一口味わうと、シャッキリとした歯ごたえの後、竹の子ならではの旨みが餡や最中の皮に馴染んで、口の中にしっとりと上品に広がります。
長年、和菓子に心血を注いできた喜久治さんは、京都の生菓子組合の理事長を務め、平成25年には京都府の「現代の名工」を受章。今は息子 基文さんと娘 由美子さんにお店を任せ、ご自身は小豆の個性を生かした新しいお菓子の研究に没頭しておられます。店頭に立つ由美子さんが、喜久春と尊敬するお父様について語ってくださいました。
「今後も地域に貢献できるようなお菓子作りを続けて、地元のお客さんに愛されるお店にしたいです。父もたまにお店に出てくれてはりますよ。家族とスタッフの計7人で、毎日仲良うやらせてもろてます」。
郷土愛と家族愛あふれる竹の子最中は、小気味よい歯ごたえと優しい甘さで西山の春を小粋に彩ります。
竹の子を使った看板和菓子、最中・餅・焼饅頭の他にも、団子やおはぎ、大福に、季節限定の品など、さまざまな和菓子が揃います。
Information
喜久春
京都府長岡京市長岡2丁目28-40
TEL:075(955)8016
http://kikuharu.com
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「地元のお客様が、どこへ持って行っても恥ずかしくないようなお菓子を心掛けて、一つひとつ丁寧に作っています(基文さん)」「普段あまり和菓子を食べない若い方にも知ってもらえるようWebサイトにも力を入れています(由美子さん)」
「既製の臼では熱で粉の風味が飛んでしまうから」と、喜久治さんが3年の月日を費やして石屋さんと共同開発した米粉用の石臼。お菓子作りへのこだわりが垣間見えます。
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