湯どうふの順正
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-Nikki Mochi- 溶ける
その食感と香り、味わいは無二。宮川町「名月堂」のニッキ餅
その食感と香り、味わいは無二。宮川町「名月堂」のニッキ餅

角が立っている見た目と食感のギャップは手に取った人だけが実感できる驚きです。

京都に五つある花街のひとつ、宮川町。置屋や御茶屋が軒を連ね、舞妓さんがおこぼをカランコロン響かせ行き交う石畳の通りを、松原通より少し下れば名月堂が見えてきます。松原から南は、生活感が少しずつ感じられる風情に変わり、そのどことなく昭和な雰囲気に、すっと馴染むように名月堂は店を構えています。

鉢植えが並ぶ軒先から、がらりと戸を引けばお目当ての“ニッキもち”がショーケースにずらり。左手からは、ご主人の趣味の熱帯魚が優雅にお出迎え。お客さんに肩肘を張らせない、京の“おまんやさん”は、ここ宮川町にもありました。

「うちは父が戦後から京都で菓子作りをはじめて昭和54年に、今の場所へ。ニッキは、“八つ橋さん”で京都では慣れ親しんでいる香りと風味ですやろ。私たち職人は商品で驚かせたいと常々思ってますから、この絶妙な力の出し方で商品化しましてん」とご主人の折田さん。“力を出す”とはお餅の煉り具合でもちもち感を出すことで、絹のなめらかさにマシュマロのふわふわ感を加えたような食感が、ニッキ餅の人気のひみつ。かの松下幸之助氏も、このニッキ餅のファンだったとか。

「幸之助さんに贔屓(ひいき)にしてもらっていた頃に比べ、実は今の時代に合わせて少し食感を柔らこうしてます」。

お店や商品のどこにも謳われていませんが、お話しを聞けば、気に入った丹波産小豆を農家さんのもとまでわざわざ引き取りに行き、自ら製あん。さらに、餅米はご主人の眼鏡に適うものを選び抜いて使用し、時代の嗜好にも敏感に対応する。その集大成、ニッキ餅の価格は、百円※。

「手の込み様は、食べる人が食べればわかるもんですから」。こんな心意気も、京のおまんやさんならでは。

お茶はもちろん、珈琲にもミルクとも愛称の良いニッキ餅。食する機会があれば、ぜひ指で掴んで手触りまで味わってください。

※2015年4月時点の価格です。

歴代天皇に献上し続けた菓匠「川端道喜」
歴代天皇に献上し続けた菓匠「川端道喜」

数時間捏ねられた餅にニッキが加えられ、独特の食感を生み出すひとときのタイミングを見計らいます。

Information
京菓子處 名月堂
京都市東山区新宮川町通松原下ル西御門町447-1
TEL:075(551)0456
 

京菓子處 名月堂 店主 折田 孝一さん

京菓子處 名月堂 店主 折田 孝一さん

「初代道喜は、足利幕府の疲弊の波による、宮中財政の逼迫(ひっぱく)を拝察し、毎日さまざまな供御(くご)を献じました。その毎朝の慣わしは、東京に遷都される前日まで、ずっと続きました」。



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