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-Koiyama- 誇る
鯉山タペストリーから見る祇園祭への町衆の思い
美しく、大切に仕舞うための「桐箱」

言わずと知れた日本三大祭のひとつ、祇園祭。歴史と、その山鉾の豪華さ、そして祭自体が約一カ月にわたり繰りひろげられる期間や規模から、今昔変わらず、都人の誇りです。室町六角の鯉山は、その思いを龍門へと踊跳する鯉に重ね、その誇りを西洋のタペストリーに托すことで、見る者を驚かせ、祇園祭の奥深さへ誘います。

「なぜ千年を超える祇園祭に、西洋のタペストリーが使用されているのか、と感じられる方がほとんどでしょうね」

そう切り出していただいたのは、鯉山保存会元理事長山本さん。その背景をお聞きすると町衆たちが抱いた祇園祭への並々ならぬ思いが見えてきました。

「鯉山の至宝タペストリーは、十六世紀にブラバン・ブリュッセル※で作られた極めて貴重なもの。ギリシャ神話『イーリアス』のトロイ戦争を描いたもので、鯉山を飾るのは製作された五枚シリーズの一枚。法皇から伊達政宗への贈り物として来日した一枚が、江戸末期に会津の天寧寺から京都の天寧寺へ移され、それを鯉山の町衆が手に入れたのでしょう」。

しかし、そんな貴重なものが、鯉山を飾ることになったのか。山本さんは至極当然のように、「町衆たちにとって祇園祭は、町の団結、都人としての粋を表現する年に一回のハレ舞台。ほかの町に負けない山を出すことこそ、鯉山町の自治力を誇ることですから。しかも、懸装品にするために、一枚を九つに断裁までしてね」。

タペストリーは、大工のノミで見事に断ち切られており、その裏には最高級の織物とも言われた名物裂で覆われています。その仕事ぶりから想像すると、タペストリーを懸装品にしようとした鯉山の町衆たちの決意と心意気を窺うことができます。

「タペストリーは重要文化財に指定されています。ご覧いただけるのは、復元新調品で、宵山の三日間だけです」と山本さん。江戸時代の名工左甚五郎作と伝えられる象徴『木彫りの鯉』とともに、今年も“動く美術館”鯉山が都大路を優雅に泳ぎます。
〈鯉山の巡行は後祭の七月二十四日。宵山行事は二十一日〜二十三日〉

※現在のベルギー・ブリュッセル。

 

株式会社 箱藤商店 代表取締役 山田 隆一さん

株式会社 箱藤商店 代表取締役 山田 隆一さん

「幕末の禁門の変では町が焼け尽くされましたが、“木彫りの鯉”と“タペストリー”は持ち出され無事だった」というエピソードからも、町衆たちが抱く祇園祭への思いの深さが感じられます。


美しく、大切に仕舞うための「桐箱」

山本さんと奥さまが新たにお作りになった「平成の祇園祭屏風」。今の祇園祭を後世へ残す作品。

美しく、大切に仕舞うための「桐箱」

Information
鯉山保存会
京都市中京区室町通り六角下る鯉山町510

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