出産祝いなど贈答品として人気の、やさしい丸みが特徴の「たまご箱」。絵がより一層際立つ可愛らしさ。
「琴となり 下駄となるのも桐の運」
この句は、ある幕末の大名がその有為転変の生涯を回顧し、桐に重ねて詠んだもの。古くより桐は、軽くて加工しやすいため様々な用途に使われ、暮らしのすぐ近くにありました。中でも「桐箱」は、調湿作用や防虫効果が高く、木目が綺麗なことから大切なものを仕舞う最高の品として重宝されてきた歴史があります。
「桐の箱というのは、非常に軽く、収縮率が少ないため精密に加工でき、高い密閉性を維持できます」。そう語るのは、『箱藤商店』店主山田さん。同店は、明治24年の創業以来、呉服や帯、清水の焼き物、能楽の面などを納める桐箱づくりを手がけてきた、京都の伝統産業界における名脇役です。
代々受け継がれてきた桐箱づくりの技術は、原木を乾燥させる工程から見ることができます。「原木乾燥は、あえて風雨にさらします。水分を含みながら乾かす工程を繰り返すことで、十分にアクが抜け、割れや変形が発生しにくい状態になります。そうなるまでに3年ほどはかかります・・・」。
熟練職人による指物の技や独自の接着方法で、製材や枠組みの工程を経てようやく一つの箱が仕上がります。「桐箱には、日本画家や図案家、書家などによる絵付けを施して、できあがり。お好みの絵が欲しい場合は、オーダーメイドも承っていますよ」。
季節の花をあしらったはがき箱は、大切な方から頂戴した季節の便りを納めておきたくなる逸品。便りを読み返す時間をより優美に彩ってくれそうです。
最近ではその機能性により、精密機械を入れるケースとしても納品しているとのこと。現代のライフスタイルに合わせて、桐箱を提案し続ける山田さんはこう言います。
「技術の追求も、商品の展開も、突き詰めればキリがない」。職人としてはもちろん、使い手視点でも桐箱を見つめる、ユーモアと含蓄のある言葉です。
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「インターネットからの注文が増えてきましたが、メールだけでなく、お電話でお話しすることで、お客さまの思いを少しでも形にできたら、と思っています」。
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