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樹齢百五十年を越える毘沙門堂「しだれ桜」
樹齢百五十年を越える毘沙門堂「しだれ桜」

樹高は約10メートル。他の名しだれ桜と比較しても低めですが、その枝張りは両手を広げるかのように約30メートルほどにも及び、その姿は「般若桜」とも呼ばれています。


 京の街中から東にひと山越えた山科。都と東国をつなぐ東海道の要衝として栄えた地に、山科盆地を見おろすように静かに佇むお寺があります。天台宗の寺院で、山号は護法山。本尊に京の七福神のひとつ、毘沙門天を祀(まつ)る毘沙門堂です。その昔、京都御苑の北、塔ノ段旧出雲寺の地にあったこの寺は、応仁の乱の戦渦をくぐり抜け、現在の地で春な秋な、多くの風流人たちを魅了しています。  「交通のアクセスが良いとはいえないこの地に、多くの方々が足を運んでくれるのは、やはり秋の紅葉と、春のしだれ桜の美しさのおかげです」。そうお話しいただいたのは毘沙門堂の生き字引、石田執事。ほとんどすべての桜のお世話を、おひとりで切り盛りされています。

 「数十年前、桜に元気が感じられないことがあってね。桜守として有名な佐野籐右衛門さんに助言を頂いて以来、少しずつ元気を取り戻して、今やこの枝張りで枝垂れてくれています」。聞けば、この地の地層は強固な層が比較的浅くにあり、根が深く潜れないのだといいます。

 「だからこそ、四月に満開の花をつけてもらうためには、その他の時期に手をかけてやるのを怠らないことが重要なんです。新しい枝の伸び具合からは、樹全体の栄養の回り具合を判断することがでるので、先回りしてケアしてやらないといけないし、寒い冬には、落ち葉を根元にかけてやって、朝の霜から守ってやらないとね」と語る石田さんの話しぶりは、使命感というよりも満開の桜を愛でたいと願う、ひとりの風流人のようにも見えます。

 「この寺は洛中にあった頃から見事な桜を咲かす寺として、都人たちから賞賛されていたのだといいます。現在の山科に移ってからも然り。これからも、桜で知られる寺でありたいですからね」。

 洛中の名所の人の多さを避け、ゆるりと春の風趣を楽しむ人々が、今年もこのしだれ桜の美しさにそっとため息を漏らすことでしょう。

 

毘沙門堂 執事石田 潔さん

毘沙門堂 執事石田 潔さん

「一年間で、新枝が1メートル以上も伸びる時があります。その大きな成長ぶりを見守るたび、その年の手間の掛け方が良かったのだと報われた気持ちになるんです」。


毘沙門堂
Information
毘沙門堂

京都市山科区安朱稲荷山町18

TEL:075(581)0328

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