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京舞の美を支える
京舞の美を支える

絵具は、膠(にかわ)で溶いて使う日本画の古典技法を用い続けています。これにより、都をどり特有の背景の色合いが生まれています。

 京都にはその昔、都人たちの活気が失われかけた時期がありました。明治維新による東京遷都が実現された時です。それまで名実共に日本の伝統と文化の中心地であり、それが都人たちの誇りの源泉だったのかもしれません。このままでは衰退するという危機感が京都の文化を支えてきた町衆たちから生まれ、いくつもの祭事や取り組みが生み出されました。

 その一つが京の春に彩りを添える「都をどり」。祇園甲部の井上流の京舞をお座敷舞ではなく、集団の舞という形で娯楽性を添えた舞台として人々を魅了してきました。今年で百四十一回目を迎えても、当時の町衆たちの創始精神は、そのまま都をどりに宿っています。

 「都をどりは明治五年の第一回から、舞台芸術のプロではなく文人や画人が支えてきました。当初は背景画に野村芳國、芳光、作詞には猪熊浅磨、兼茂先生が担当され、戦後一時は谷崎潤一郎、 堂本印象両先生も加わるなど、祇園甲部の誇りは蒼々たる文化人たちの功績とともに、その伝統は川面(かわも)美術研究所設立者である川面稜一へ、そして所長の荒木かおり(稜一の娘)へとその創始精神が引継がれ、今に至っています」。そう語るのは、現在までこの舞台の背景画を十年以上描き続けてきた沼田修さん。川面美術研究所の主任研究員という肩書きを持つ日本画家です。川面美術研究所は、野村芳光の流れをくむ絵師集団。日本が培ってきた伝統技術と最新の技術を両輪に、その時代の色や時代背景を詳細に考証し、二条城の障壁画の模写や熊本城の本丸御殿の復元などに携わってきました。

「私たちの仕事に貫かれる精神は、もちろんはじまりから変わりません。井上流の京舞の美を引き出すために、日本画の手法で描く。もちろん、背景画だけでは舞いの素晴らしさが演出できません。鮮やかな色を演出し、ときに平面の画を立体的に見せてくれる照明さんたち、そして舞台背景に動きとリアリティを生み出してくれる大道具さんたちがいて、都をどりがお客さまに喜ばれるものになります。私たち絵描きよりも、すごい方たちですよ」と沼田さんは微笑みます。

 毎年、祇園祭が終わると本格的に次回の打合せがはじまり、作詞の内容に従い、背景画の縮画である道具帳をたたき台に、春夏秋冬の京の風物を物語に挿していくのだといいます。京の春を代表する都をどりは、京の夏の本番を告げる祇園祭からはじまる物語。都をどりの京都らしい雅やかさは、百四十一年のサイクルの中にもずっしりと根を下ろし、色を添えていました。

 

巨面美術研究所 主任研究員(絵画)沼田修さん

巨面美術研究所 主任研究員(絵画)沼田修さん

「その時代や地域の色やモノを多角的に考証し、現代の技術を駆使して最短距離で目的を達成する。最小の労力で最大の効果を引き出すのが川面美術研究所なんです」。


粒が均一に揃った上質な黄金色の粟。長きにわたり愛される理由が、この材料からも見て取れます。
粟で搗かれた餅を手早くあんこで包みます。その所作は、目にも止まらぬスピードで、同じ大きさに形成されます。
Information
祇園甲部歌舞練場
巨面美術研究所


京都市右京区鳴滝本町69-2

TEL:075(464)0725

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