心、涼む
自然のチカラと職人技の「竹工芸」

自然のチカラと職人技の「竹工芸」


 鞍馬の竹伐り会式(たけきりえしき)が行われる6月20日ごろには、京の街は蒸し暑く、青竹に短冊を吊るす七夕を迎えるころには、いよいよ夏も本番です。和の風情、京の文化は、どうも昔から竹とは縁が深いようで、打ち水をした庭を眺めれば、竹垣、枝折戸、ししおどし、床几も竹。屋内に目を転じれば、衝立(ついたて)、数寄屋の床柱、茶の湯の茶杓や茶筅、生け花の花器にも竹が使われています。
 そんな竹工芸の世界に生き、さまざまな工具を駆使して和の美を作っている匠の一人、吹田義夫さんをお訪ねしました。吹田さんの工房であり、レパートリーも豊かな竹製品が並ぶ「竹萬竹材店」は、彼で四代目。現在は、お父さん、息子さんとともに働いていらっしゃいます。
 「京都の四季の気候は変化に富んでいるので、きめが細かく、しっかりと堅い竹が出来るんですよ。竹は成長が早いのも特徴です。タケノコが生えたら、数ヵ月後にはもうすっかり竹材として使える長さになっています(2〜3年後が最適と言われています)。これを湯抜き、火焙りなど、手間をかけて仕上げていきます」。
 店先にも、工房にも、色や形のことなる竹が並んでいます。あらためて、竹にこんなに種類があったのか…と驚くばかり。
 「代表的なところでは、細工がしやすい真竹。タケノコでよく知られる孟宗竹(もうそうちく)があります。孟宗竹は、花器や床柱にすると味わい深い竹材です。また四角、六角の竹材もあります。もちろん、本来は丸い竹なんですが、こうした形に育てることも出来るんです。数寄屋建築の床柱や欄間(らんま)などでよく使われてきましたが、この時代、数寄屋も数が減ってきていますので、新しい時代に応じた竹の用途を考えていかないかんのです」。
 代々、「ものを創る人を大切に」と、職人さんたちを大切にしてきた竹材のお店。店頭には、吹田さんの工夫によるユニークな竹工芸も並んでいます。


  竹萬竹材店 吹田義夫さん
竹萬竹材店 吹田義夫さん
「美しい、きれいというだけでなく、人をワッと驚かせたり楽しませるものを…」と熱く語る吹田さん。京都の竹をフィラメントに使ったエジソンのように、明るい発明が待 っているかも。

竹萬竹材店

竹萬竹材店
京都市南区西九条蔵王町30-2
TEL 075(681)2081
  竹萬竹材店