地球温暖化の影響で、外はムッとするような熱気、ホテルやタクシーの中は冷房がキンキンに効いて、極端な温度差に悩まされるようになった“日本の夏”。古都、京都を訪れた時だけは、いにしえの納涼を見習ってみませんか?
「削り氷にあまづらいれて、
あたらしき金椀にいれたる」
『枕草子』に清少納言が記したように、その昔、やんごとなき人々は氷室に秘蔵されていた氷を召し上がったとか。では、庶民は指をくわえていたのか…というと、日本の文化には「見立て」という趣向の遊びがあります。氷が手に入らないなら、氷に見立てた代用品を。
「そうなんですよ、氷に見立てて庶民が食したのが、この水無月(みなづき)なんです」とおっしゃるのは、祇園石段下、つまり八坂神社の門前に店を構える「祇園鳴海屋」のご主人、前出暢久さん。店頭に並ぶ水無月、なぁるほど、三角に切った姿は見ようによっては氷に見えます。上にのってる小豆も、厄払いの意味があるとか。
「今ではわりと長い期間にわたって製造していますが、昔は、五月の節句から七月の祇園祭にかけての“夏のお菓子”だったんです」。旧暦六月=水無月は真夏。炎暑の無事を祈る「茅の輪くぐり」の神事は、粟田神社をはじめ京都の諸社に今日も伝わっています。そんな水無月の神事のお菓子が、「水無月」。八坂神社の祇園祭に関わる神事にも欠かせません。
冷やっこい水無月を一つ、口に含むと、いにしえの夏が偲ばれます。
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![祇園 鳴海屋 前出暢久さん](image/im_01.jpg)
![祇園 鳴海屋 前出暢久さん](image/im_name.gif)
前出さんの趣味は、スポーツ。とりわけ水泳が得意なのだとか。お饅頭屋さんの温和な三代目、実は、商いでも趣味でも“夏の男”!?
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