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自然と芸術に感動、春の「実相院」

 「お寺を訪ねる」、「庭園を眺める」、「歴史を語る芸術に逢いたい」などなど京都の旅の目的はさまざまですが、この春は、そんな魅力が見事にとけあった風格ある寺院を訪れてみませんか?
 場所は、春の到来が洛中より遅い岩倉の実相院(じっそういん)(バス停としては「岩倉実相院」と書きます)。現在では地下鉄が「国際会館前」まで延び、グッと便利になりましたが、かつては洛中の奥座敷といったところ。それだけに豊かな自然に包まれ、「岩倉門跡」と昔は呼ばれた門跡寺院とあって由緒ある寺宝の数々が伝わり、しかも、意外に広く知られていないとあって、京都探訪の“穴場”と言えるでしょう。
 その美しい庭園、鎌倉時代からの御本尊であるお不動さま、狩野派を中心とする襖絵、古文書の保存に当たっているのが、岩谷千寿子さんとそのご家族。往古の威風を失いかけていた実相院を再建された、先代のご住職は、岸谷さんの亡きお父さんです。鎌倉時代からの名刹が、ほとんど一つの家族によって守られているということも、珍しいのではないでしょうか。
 そんな実相院でも、ひときわオススメなのが春の「床みどり」と秋の「床もみじ」です。
 「磨き上げられた床に、燃えるよな紅葉が美しいところから“床もみじ”という名が付けたられたのは、そんなに昔のことではなくて、観光客を案内されているタクシーの運転手さんが、ご自分のサイトで書かれたことが始まりなんですよ。“床みどり”というのは、それから1年か2年してから。青葉の美しさから私が名づけました」。ヤマモミジ、イロハカエデなど、大小さまざまな春の青葉が、まるで鏡か湖にでも映るかのように、美しい景色を味わわせてくれます。春が遅い岩倉だけに、華麗な桜が咲き誇る庭と合わせて、荘厳な自然が心ゆくまで堪能できます。

 

実相院 岩谷千寿子さん

実相院 岩谷千寿子さん
「春とともに日本へ渡ってきたツルが、子どもを育て、秋になってまた渡って行く情景を11面の襖に描いた、江戸時代の襖絵が寺宝として伝わっています。この春、4月4日から5月10日まで、11面襖絵が並ぶ「つるの間」を特別公開致します」。


実相院

実相院
京都市左京区岩倉上蔵町121
TEL 075(781)5464
  実相院