お月さまがとても美しく見える季節になりました。今年の「仲秋の名月」は九月十八日。京都のお月見にはススキ・萩の花・月見団子とともに”おはぎ“が欠かせません。同じ作り方をしても、春から夏は「ぼたもち」、萩がきれいな秋に作るのが「おはぎ」だそうです。「おはぎって、どこの店でも代りばえしない」…なんて考えは大間違い! お月見(観月)の本場、嵯峨野の大覚寺界隈で地元の人が教えてくれた〈松楽〉のおはぎをご覧あれッ。
 「白いのがつくね芋、紫がむらさき芋、緑のはエンドウ豆…、うちのおはぎは十二種類あるんですよ。どれがおいしいかって?それは好き好きですからねぇ(笑)」。
 お客さんが三人も入ればいっぱいになりそうな小さなお店。そこに、彩りも豊かなおはぎが並べられています。一種類、二種類と、工夫を重ねておはぎの数を増やしてきたのは、店主の松田征三さんです。
 「京都の和菓子の老舗で十八歳から修行し、昭和四十三年に独り立ちしました。京都には何百年と続いた老舗が数多くあります。そんななかで、後進の私がどうやって商いをしていこうか…。本格的な和菓子を同じように売っててもつまらないでしょ。そこで思いついたのが、庶民のお菓子とされているおはぎを、本格的な素材と手作りにこだわって売ることだったんですよ」。
 栗をヨモギ入りごはんで包み、さまざまな餡でくるんだおはぎは、二つでも三つでも食べられそうな上品な甘さです。その味を求めて、遠くからやって来るお客さんも数多いそうです。
 「うちの店があるのは桂川の西、西山の麓の松尾大社門前です。交通の便がちょっと悪い場所にもかかわらず、また、京都には有名なお店がたくさんあるのに、一個、二個のおはぎを買いにわざわざ電車に乗って来てくださるお客さんが次第に出来てきました」。ほんのり甘いおはぎに、松田さんとお客さんの心が通います。
 


「新しいおはぎの種類を作るたびに試行錯誤の連続です。試食を頼む家族に『最近太ってきたァ!』と皮肉を言われながら…」。松田さんの「おはぎ作り秘話」です。

 

松楽
京都市西京区嵐山宮ノ前町45
TEL 075(871)8401