京都市内から車で一時間、のどかな田園風景が広がる船井郡瑞穂町。ここは松茸の高級ブランド、丹波松茸の産地としてその名を知られる所。「瑞穂の松茸はかつては献上松茸に選ばれたほど。丹波産の中でも特に香りがいいんですよ」とお話しいただいたのは、農業の傍ら、道の駅『瑞穂の里』で農産物販売の陣頭指揮を執っておられる松村稠雄さん。瑞穂町は丹波高原の山々に囲まれ霧が発生しやすい地形に加え、保水性に優れた粘土質の土壌。瑞穂には極上の松茸が育つ環境がすべて揃っていると言われています。
「松茸は赤松の根元にシロになって生えます」と松村さん。“シロになる”とは、こちらの言葉で“輪のように”の意。一本の松茸から周囲に飛び散った胞子は期が熟すと、まるで円を描いたように群生するのだそうです。それなら素人にも簡単に見つけられると思いきや、「でもそれは“落ち葉の下”での話。素人にはまず無理やね(笑)」。しかし名高い瑞穂の松茸も昭和33年には91トンも収穫できたのが、昨年はわずか1.1トン。「昔はそれこそ(松茸採りに)山に上がったら、帰りには捨てんと持てへんくらい採れたんですけどね」とかつての豊作を懐かしむ松村さん。香り際立つ瑞穂産の丹波松茸はその希少価値をますます高め、今年も魅惑の香りを漂わせます。